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カテキンのいろは

カテキンとは?


カテキンは、主にお茶に含まれるポリフェノールの一種で、お茶に特有の苦渋味成分のもととなる物質です。ポリフェノールはほとんどの植物に含まれる色素や苦渋味の成分で、ゴマのセサミン、タマネギのケルセチン、ウコンのクルクミン、ブルーベリーのアントシアニンなども同じ仲間です。抗酸化作用を持っている赤ワインやココアなどと同様、その機能性や健康効果が期待されています。

カテキンの種類


カテキンは、ポリフェノールの中のフラボノイド、その中でもフラバノールという種類に入ります。緑茶中には、(-)エピカテキン、(-)エピガロカテキン、(-)エピカテキンガレート、(-)エピガロカテキンガレートなどの約4種類のカテキンが含まれています。その中でも(-)エピガロカテキンガレートが一番多く、含まれるカテキンの50〜60%を占めています。(-)エピガロカテキンガレートは、カテキンの中でも抗酸化作用をはじめとし、広範な生理活性を持っています。
(-)エピガロカテキン、(-)エピカテキンガレート、(-)エピガロカテキンガレートの3種類は、お茶に特徴的なカテキンですが、(-)エピカテキンは、お茶以外にリンゴ、ブラックベリー、ソラマメ、サクランボ、ブドウ、ナシ、キイチゴ、チョコレートなどのポリフェノールにも含まれています。また、ソラマメ、ブドウ、アンズ、イチゴなどのポリフェノールには(+)カテキンという種類のカテキンが含まれています。

カテキン発見のあゆみ


カテキンの語源は、インドなどに生えているアカシヤ・カチュー(マメ科アカシア属)の樹木からとれた暗褐色の“catechu”(カテキュー)に由来しています。スイスの化学者F.F.Rungeが1821年、catechuから無色の結晶を分離し、その後1832年にNees von Esenbeckが、Rungeが分離した物質にたいして“catechin”(カテキン)と命名しました。このアカシア・カテチューに含まれるカテキンは20世紀に入ってからドイツのK. Freudenbergらによりエピカテキンであることが確認されました。

20世紀に入ると、茶からカテキンが純粋に分離され化学構造の研究が本格的に進められました。まず、1927年、山本頼三が緑茶よりカテキン類似の物質を分離し、続いて1929年に辻村みちよが緑茶抽出物より初めてエピカテキン(EC)を結晶状に単離しました。その後1933年、大島康義と合馬輝夫は台湾産茶葉から、1934年に辻村により日本緑茶からエピガロカテキン(EGC)の結晶を分離し、同時に辻村は緑茶からエピガロカテキン(EGC)を分離しました。これにエピガロカテキンガレート(EGCg)を含めた4種がお茶の主要なカテキンであり、4種類中3種類が日本の化学者により発見されたことになります。

1985年には、生物学的実験に用いるのに十分な量のカテキンを抽出・精製される方法が開発されました。また、1988年に茶の抗菌作用が再発見されました。この抗菌作用が殺菌によることや、茶には細菌性タンパク毒素に対する抗毒素作用、インフルエンザウィルスなどに対する抗ウィルス作用があることも新たに明らかにされ、精製法を活用し、作用の活性成分を追及して研究した結果、カテキンの特異的な生理活性が見いだされました。

その他にも特にこの十数年の研究によって様々な機能性が明らかとなり、カテキンの生理活性効果が再認識され始めました。「カテキン」は、単一の化学物質名だけを表すのではなく、お茶の苦渋味成分の一つで人の健康にとって効用のある活性物質を総称するもの、としての認識も広まってきており、カテキンの多機能性物質としてのますます幅広い健康効果が期待されています。

出典:茶の機能−生体機能の新たな可能性 ;村松敬一郎(代表) 編
(株式会社 学会出版センター)